このところBrahmsをプログラムに乗せることが多くて、シンフォニーの4番連弾版をコンサートで弾いたり、唯一の歌曲チクルスマゲローネを合わせ始める事など、素晴らしいなと思いつつ音楽に満たされる毎日だ。
ハンブルグに生まれ、ブラームス協会の会長でもあった、Detlef Kraus先生に3年もお習いしていたのに、余り沢山はブラームスの作品を手掛けていないことに最近気がついた。
シューマンやシューベルトは色々聴いたり弾いたりしてきたのに、これはどうしてかと考えると、何か難しくて入りにくかったということ、それとブラームスを全曲演奏をされていた先生のレッスンが他の作曲家のレッスンとは違って恐ろしく細かく、とても音楽を感じる自由が生まれなかったことだった。
でも今は純粋にブラームスっていいなと思う。なぜシンフォニーの4番を選んだかといえば、はるか以前にベルリンフィルとショルティの棒で聴いた4番が印象的であったこと。そして1楽章の何とも言えない美しい入り方がいつまでも心に沁みついていたからだと思う。
オーケストラバージョンをピアノで弾く時、一人では表現不可能といえるが、二人で手分けすれば何とか響き全体が一つに収まってくれるようだ。
別にオーケストラを再現しようなどとは思わないが、ピアノ音楽とは違った、彼の音楽の大きい表現力と美しさ、それをコンサートホールに行かなくても二人で再現できるという可能性に感激して、何度も素晴らしい瞬間が演奏中に訪れた。
マゲローネのほうは歌もそうだろうけれど、伴奏のピアノがちょっとぐらい弾ける人でもよっぽどさらわないと演奏会には出せないという難しさもあって、なかなか演奏会で聴くことができない。
そんな時ベルリンで10年ほど前に伴奏していたNikolayがMecklenburg Vorpommernのフェスティヴァルで歌うというのを聞きつけ、そのゲネプロと本番を聴くことができた。余りにも私が感激して心を奪われてしまったので、来年の秋にするコンサート、シューベルトの冬の旅をマゲローネにしようと彼に提案され、それこそ天にも昇る心地とはこのことだろう、すっかり舞い上がってしまった。
そこへ持ってきて、大学の同級生だった淡野弓子さんが歌っていたのを思い出し、この度まず半分だけあわせたところ、彼女も涙ぐむほど感激して、一緒にコンサートをしようと提案したのだ。
なんという幸せ、何という偶然、、そして本来は男性歌手が歌うこのチクルスを75歳でデビューしたメッゾソプラノ歌手が歌うというのだ!!
これは話題にならない訳がない。